上北沢の家

上北沢の家

都心の住宅密集地、わずか18坪の狭小敷地に建つ、若い夫婦+将来の子どもたちのための住宅である。

29歳で東京の世田谷に土地を購入して家造りに取り掛かった。その為低予算で小敷地(18坪)と現状にはゆとりがない。そこで、住まい方の見直しから始めて、必要なものそうでないものを見極めた上で、ローコストでありながら本質を犠牲にすることなく、豊かで居心地の良い空間を造り出すことを試みました。

「限られた環境や面積だとしても、のびのび周囲に気兼ねなくできるだけ開放的に暮らしたい」との希望から、法規制の範囲でR屋根にすることで空間の容積を最大限とり、吹き抜けのある2階リビングとし、構造計算に基づき耐震性を確保したうえで、壁の少ない構造とすることで将来にわたり、柔軟で可変性のあるプランを提案、物理的な平面上の狭さをカバーする為に極力間仕切りを設けずにオープンなプランとし、空間の広がりを縦方向の吹き抜けに求めた。

開放的なプランを実現するにあたり、温熱環境の快適性を確保する為に予算とのバランスをとりつつも断熱性を高めたえうで、「太陽光を利用したパッシブソーラーハウス(OMソーラー)」を導入した。冬期には屋根面で太陽の熱を集めて床下に運び、1階の基礎スラブの土間コンクリート蓄熱しすることで床面が床暖房のように放熱し、上階に暖かい空気が流れてゆく。悪天候時でもガスヒーターによる補助暖房によって全館暖房を実現。夏期はハンドリングボックスを逆回転し、湿度や熱い空気やを外部に排出する。都内の狭小地だと十分な通風が得られないこともある為、主に温度差と機械を利用した重力換気に期待している。
間仕切りの少ない開放的な家であっても家中が快適になるようにと考えた。

また、「自然の木をふんだんに使いたいが、古民家風や山小屋風なのは避けたい」、との要望をうけて内外ともに無垢材やシナベニアを使い、モダンな印象ながらも温かみのある優しいデザインとした。

この家は実は多摩美の学生時代からのつきあいの後輩の家であり、はじめはビールを飲みながら分譲マンション購入の相談からはじまったもの。予測される将来のマンションスラム化リスクについて「分譲マンションはいつか沈む泥船」に例えて説明し、方針を無理だと諦めていた戸建住宅に考えを切り変えて都内で土地取得からサポートして、都心に土地付き注文戸建住宅、それも建築家住宅を実現することに成功した。

竣工
2000年
所在地
東京/世田谷区
構造
木造 一部 鉄骨造
延床面積
90.63m2(27.41坪)
敷地面積
60.59m2(18.32坪)

photo by Takatsugu Hanmura