名古屋の家
〜将来の変化に柔軟に対応する、都心部に建つ玄関共有型二世帯住宅
名古屋駅から徒歩10分強、地下鉄の駅にも隣接した極めて利便性の高い都心部エリアに計画した二世帯住宅である。
東京に住む夫妻が父の住む旧家屋を建て替えての移住を計画した。周辺はまだ木造2階建ての住宅やアパートが残ってはいるものの、徐々に容積率を有効に使った収益性の高い建物への建て替えが進んでいる。
本計画も当初は賃貸住宅の併用も視野にいれて3〜4階建てでボリュームの検討も行ったが、資金的に無理のない個人住宅とした。
ただし、父親の年齢が80歳を超えることから天寿をまっとうされた後には賃貸住宅としても貸し出すことも可能なように、またライフスタイルの違いや敷地の面積から、建築基準法的に各世帯ごとに独立したスペースを有しながらも戸建住宅として扱われる「玄関共有型二世帯住宅」を提案した。
1Fの道路側には共有の玄関ホールと収納スペース(将来エレベータの設置が可能)、南側に単身で暮らす父親のスペースを配置した。風呂やキッチン、トイレなどの水回りも独立して用意した。
2Fはホールを介してやはり南面に子世帯のスペースを置いた。要望で家事室(主に洗濯+物干)を用意した。
どちらも必要十分にして決して広くはないオープンなスペースを可動の間仕切りによって、都度、使い勝手に応じて柔軟に可変できるようにした。
将来的に南面隣地は小規模ビルに置き換わる可能性があることから、1Fは出窓のトップライト、2Fは屋根面にトップライトを設置して採光を確保できるようにと考えた。
途中からコロナ禍に見舞われた現場であったが、遠方の現場ということで初めからリモート監理を予定していて、コンクリートの打設などは横浜の事務所に、時には都内の会議の入室の歩道上でリアルタイムにライブ画像にて受け入れ検査や打設の様子を確認した。
また要所要所では現地での立ち合い確認を行うが、それも新幹線で新横浜駅ー名古屋駅 1時間21分と時間的にも、ちょっとした関東圏の現場の移動時間とさほど変わらないか、むしろ早いこともザラである。
便利な世の中となり、ご縁があれば遠方や海外でも活動の幅が広がることと積極的に受け入れたい。
一方で、現場で実作を作り上げる現場監督や職人をはじめ工事関係者の人々はリアルな存在であり、そこの場でしか生まれない一期一会の協働作業の大切さが変わることはない。今回もリモートながらも大工や監督にも相談して、施工者の意見も取り入れながら、既存建屋から生け捕りした床柱を再利用して設置、思いのほか反っていたり、ホゾ穴の空いている位置が合わなかったり、地方の風習などなど….を設計を変更して作り手にとっても納得の出来るものとし、新しい家にもかつての住まいへの想いを継承することができた。
余談ながらも名古屋は中村が高校生の頃、美大受験のために美術予備校に通った思い出の場所。
その後、無事に多摩美術大学に進学、建築家となって再訪し、この地に実作を残せたことを嬉しく思うとともに、このご縁に感謝したい。
- 竣工
- 2020年11月
- 所在地
- 愛知県名古屋市
- 構造
- 木造 2階建て
- 延床面積
- 115.80m²(35.03坪)
- 敷地面積
- 92.25m² (27.90坪)
photo by ToLoLo studio